成瀬巳喜男の『驟雨』と小津安二郎の『東京暮色』


 朝の最低気温が5℃で、日中は晴れて最高気温が11℃であったが、夕方から冷え込む。ぶるぶる。

 「日本映画 スター・ベスト30」が10月に引き続き、11月も上映された。
 観客が夏に選んだ映画スターベスト30の出演している映画の上映会である。
 28日に成瀬巳喜男の『驟雨』、30日に小津安二郎の『東京暮色』と観に寄った。大入りだった。
 二本の映画に、原節子がそれぞれ出演している。
 1956(昭和31年)と1957(昭和32年)の作品である。
 太字の名前は「日本映画 スター・ベスト30」に選ばれた俳優である。
 
 成瀬巳喜男監督の映画『驟雨』(1956年、東宝、90分、白黒)の出演は、原節子佐野周二香川京子小林桂樹
 撮影が玉井正夫。美術は中古智である。
 11月プログラムから引用。

 岸田國士の数編の戯曲をもとに水木洋子が脚色。原節子佐野周二の共演で、「めし」「夫婦」などに続いて、成瀬巳喜男監督が倦怠期の夫婦の感情を描く。

 ラストは、文子(原節子)と亮太郎(佐野周二)の二人が紙風船をついて、仲直りを暗示しているシーンにすがすがしいものがあった。
 姪のあや子(香川京子)が新婚旅行先の京都から夫をほったらかして帰り、文子の家に来て夫の愚痴をいい別れる別れないと騒ぐのだったが、よりを戻す事にしたあや子からの手紙で文子と亮太郎の二人も庭で紙風船をついて遊び仲直りをするのだった。
 夫婦の感情の機微を繊細によく描いている。


 小津安二郎監督の映画『東京暮色』(1957年、140分、白黒)の出演は、原節子有馬稲子山田五十鈴笠智衆
 撮影が厚田雄春。  

孝子(原節子)と明子(有馬稲子)の姉妹は、愛人と姿を消した母(山田五十鈴)と再会する。別な男と暮らし麻雀荘を営む母、夫との仲がしっくりいかない姉、恋人の子どもを身ごもった妹。それぞれに孤独な心を抱えた家族の姿を陰影濃く描き、人生の悲哀をにじませる。

 脇役に中村伸郎杉村春子、田浦正巳、高橋貞二、三好栄子、宮口精二長岡輝子浦辺粂子田中春男が出演している。
 中村伸郎は、母(山田五十鈴)の亭主で麻雀荘の主人で、飄々とした人物を演じている。
 杉村春子は孝子(原節子)と明子(有馬稲子)姉妹の父(笠智衆)の妹である。
 映画の冒頭のクレジットのなかに、石山龍嗣の名前を発見して驚いた。
 どれが石山龍嗣か、観ているあいだ分からなかった。
 あとで調べると、深夜の喫茶店の客の役で出演しているようだ。
 このシーンは、宮口精二が明子(有馬稲子)を、深夜若い娘がこんなところにいるのに疑いを持って問責している場面で、その喫茶店の客の一人が石山龍嗣であったようなのだ。