『わたしのこだわり――仕事・モノ・コト・人生の流儀』は、『図書』二〇〇六年六月号から二〇〇八年十二月号に連載された三十人のエッセイをまとめた本である。
「禁止事項を作る」というタイトルで川本三郎さんが書いている。
、ものを書くようになったのは、一九七〇年代のなかごろ、二十代の終わりのことだが、「僕」という主語を使わないと心に決めて、かわりに「私」を使ったという。
そのうち、五十代に入ってからのことだが、「私」という主語を使うのも、うっとうしくなってきたそうだ。
《きっかけは、あるアメリカの作家の小説を翻訳した時だった。「I」を律儀に「私」と訳していたら、一ページにいくつも「私」が出てきて読みにくくて仕方がない。いくつか削ったらすっきりした。言語学者、金谷武洋著『日本語に主語はいらない――百年の誤謬を正す』(講談社選書メチエ、二〇〇二年)にあるように、日本語は主語がなくても成り立つところに良さがある。》 30ページ
つづけて、
《五十代になってそれに気がついてから「私」も取り去ってしまった。すっきりした。》

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