映画『争闘阿修羅街』余聞

 3月は音楽の伴奏で無声映画を楽しむ「サウンド・アンド・サイレント」の作品として柳下美恵さんのピアノの伴奏による八代毅監督の『争闘阿修羅街』(1938年)を鑑賞した。
 「1970年代アメリカ映画特集」からは、ロバート・アルトマン監督の映画『バード★シット』(1970年)、『ナッシュビル』(1975年)の二本を観た。

 八代毅監督の『争闘阿修羅街』に出演しているハヤブサ・ヒデトは広島市出身のアクションスターであるという学芸員による解説があった。
 そのハヤブサ・ヒデトのアクションシーンには驚かされた。
 八代毅はハヤブサ・ヒデトの監督名。
 昭和13年(1938年)の大都映画、36分、白黒、無声の映画である。

 ハヤブサ・ヒデトが俳優と監督をした大都映画とはどのような映画会社であったのかと思い、本庄慧一郎著『幻のB級!大都映画がゆく』を手にとってみた。
 昭和三年の河合映画会社から昭和八年の大都映画発足と昭和十七年に日活、新興と合併して大映になるまでの大都映画の年間製作本数が昭和八年からは常に競合他社を上回っていた。

 大都映画で監督、脚本家、カメラマン、助監督を務めた四人の叔父たちを筆者は持つ。
 その叔父たちを通じて大都映画をつくりあげた河合徳三郎への関心を深めたという。
 本書の第一章、第二章は波乱万丈の河合徳三郎の前半生と大衆娯楽路線の映画作りに驀進(ばくしん)する実業家の後半生をたどる。

 大都映画の作品、女優、男優、監督についての写真と解説が後半にあり、それらの俳優のエピソードが興味深かった。

幻のB級!大都映画がゆく (集英社新書 478F)

幻のB級!大都映画がゆく (集英社新書 478F)