クリムトとウィーン

ダイサギ

 川を渡っていると、川岸の岩場に大きな白い鳥がいた。大きさがアオサギにそっくりである。しかし、くちばしが長く黄色だ。頭部に色の付いた冠羽が見られない。調べてみると、ダイサギらしい。

サギ科の鳥。全長八九センチくらいで全身白色。水辺でみられる。温・熱帯地方に分布。日本では、冬鳥として本州以南に渡来する亜種と、夏鳥または漂鳥として本州以南で繁殖する亜種(チュウダイサギ)とがある。  『大辞泉

 「芸術新潮」2006年10月号は、特集「クリムト きらめく黄金の裏側へ」である。グスタフ・クリムトの作品と生涯を木島俊介氏が解説している。
 第1章 出世街道からドロップアウト
 第2章 黄金職人のプライド
 第3章 画家と女と名声と
 第4章 夏だけの風景画家
 第5章 色彩爆発時代
 これらの章でアカデミズムと決別したクリムトを、木島氏は丁寧にたどりながら、彼の絵の秘密を解き明かしてゆく。読みながら、おやっ、と思ったのはクリムトの名がメジャーになったのが二十世紀後半になってからということだった。

 少し脱線しますが、クリムトの名がメジャーになったのは20世紀後半になってからのことです。装飾性の高いポップアートの登場や、デザインとアートの距離が近くなって、初めて彼の真価が見出された。日本人にファンが多いのも同じ理由。日本美術には枯山水ばかりでなく、桃山の豪奢もあります。さらに琳派の例にあるように、装飾性と芸術が融合していることに違和感を感じない国民性なんですね。  41頁

 他に紀行「ウィーン クリムトめぐり1週間」という文で、地図と写真が見ごたえがある。クリムトをめぐってウィーンを歩き回るのに便利なガイドブックといえるかな。