2006-01-01から1年間の記事一覧

浦上玉堂の魅力

一日中、時雨(しぐれ)模様だった。肌寒い。ぶるぶる。こういう時は、蕪村のこの句は、どうだろうか。「禅林の廊下うれしきしぐれ哉」。もう一つ、「古傘の婆娑(ばさ)と月夜の時雨哉」。 教育テレビの「新日曜美術館」は浦上玉堂をめぐってだった。今の岡…

風が吹けば・・・ブルーノ・ムナーリのこと

朝、「ウェークアップ! ぷらす」というテレビ番組で、映画『硫黄島からの手紙』の栗林忠道中将役の渡辺謙さんが出演していた。この映画をめぐっての経緯や思いなどが語られていて、興味深く聴いた。 書店でもらったリトルマガジン『経Kei』11月号を読んだ…

東京のカフェハウス

公園のコナラの木の周辺に、木の実が散らばっている。根元の部分は降り積もっているようだ。ドングリである。 クヌギ・カシワ・コナラ・カシなどのブナ科植物の実。球形や卵型で堅く、下方を殻斗(かくと)が包む。 『大辞泉』 拾ってドングリを握ると、つる…

クリント・イーストウッド監督に聞く

川を渡っていると、竹の篊(ひび)に鳥が止まっていた。アオサギだ。まだ、渡り鳥は見かけないが、冬鳥がやって来るのは、もうすぐだろう。 夜、NHKテレビの「クローズアップ現代」で、《76歳・映画にかける〜クリント・イーストウッド監督に聞く》という…

吉本隆明の『生涯現役』

朝晩は寒くなった。通りの街路樹や公園の木も紅葉がすすんでいる。カエデとイチョウが、取り分け目に鮮やかだ。青空を背景にして見事である。 コナラの木の周辺にドングリが落ちて敷きつめられたようになっていた。歩道の部分には踏まれてつぶれたドングリが…

折口信夫―「まれびと」の発見

NHK教育テレビの「知るを楽しむ 私のこだわり人物伝 折口信夫―古代から来た未来人」の第二回、〈「まれびと」の発見〉を観た。 三重県の大王崎にある灯台から遥か彼方まで広がる海が見える。その灯台のそばから中沢新一が、折口の「まれびと」の発見をめぐっ…

ギョッとする江戸の絵画〜伊藤若冲

NHKの「知るを楽しむ この人この世界」は辻惟雄さんで、「ギョッとする江戸の絵画」の第五回《絵にしか描けない美しさ〜伊藤若冲》を観た。先週、うっかり見逃していたので、再放送で早朝に辻惟雄(つじのぶお)さんの名調子を聴く。 冒頭、アメリカのロサン…

ジィップの本『マドゥモァゼル・ルウルウ』

昨日の夕方、道端の電柱でピチピチピチ・・・ピチピチピチと音がするので仰向けば、電線に鳥が群れていた。晴れた空を背景にして影絵のように見えるムクドリであった。 『サンデー毎日』の「満月雑記帳」で、クリント・イーストウッドが監督した映画『父親た…

折口信夫ー古代から来た未来人

一昨日から急に寒くなる。そういえば、七日は立冬であった。暦の上で冬が始まる日だそうだ。朝晩はぶるぶる、冷え込むね。この寒さで初めて暖房器具を使い始めた。ということは、今年の秋はずいぶん暖かかったんだね。葉牡丹の苗を見てみた。うーむ。しっか…

原田治の『ぼくの美術帖』のこと

夕方、東の空に月が昇っていた。丸く大きく見える満月だ。うーん。今日は満月雑記帳だ! 今朝の朝日新聞の読書欄の「たいせつな本 my classics」で、中野翠が原田治の『ぼくの美術帖』*1を挙げている。中野さんが、《出版不況と言われる中で、今年の春、うれ…

伊藤逸平の雑誌『VAN』とカフェ「コロンバン」

多田道太郎の『物くさ太郎の空想力』を読んでいると、「情報型少年」で森本哲郎さんの太平洋戦争末期の硫黄島がおちた頃のエピソードが出て来る。 『芸術新潮』2006年10月号で、グスタフ・クリムトの特集があった。その関連でウィーンという都市の歴史…

情報型少年と新聞型少年

多田道太郎の『物くさ太郎の空想力』(角川文庫)を読むと、「情報型少年」という文で、多田さんが鶴見俊輔さんから贈ってもらった『対談集・同時代』という本をめぐって、ちょっとした鶴見俊輔論を展開していて面白かった。 その面白かったという文章は、『…

長新太とスティーヴンソンの話

『飛ぶ教室』(光村図書)2006年秋号は、「ほぼまるごと一冊長新太」特集号で、昨年亡くなられた長新太さんをめぐっての対談やエッセイを読んだ。 「長い新しい太い線は終わることがない」という荒井良二といしいしんじの対談。それと、長新太との長い付…

クリムトとウィーン

川を渡っていると、川岸の岩場に大きな白い鳥がいた。大きさがアオサギにそっくりである。しかし、くちばしが長く黄色だ。頭部に色の付いた冠羽が見られない。調べてみると、ダイサギらしい。 サギ科の鳥。全長八九センチくらいで全身白色。水辺でみられる。…

茸狩や頭を挙れば峰の月

秋晴れですがすがしい。日差しが強いが、肌に気持ちよい気温である。夕方、南東の空に月が昇っていた。高度は高くて四〇度くらいである。ちょうど半月になっている。月の右側へ太陽からの光が当たっているのだ。上弦の月が地平線へ没する時刻は午後十一時半…

映画『父親たちの星条旗』と戦費

イチジク畑に実がなっている。あらかた食べ頃の実はもがれて、小さな実が枝に残されているようだ。 『サンデー毎日』で、中野翠の「満月雑記帳」を読んで、是非観たいなあと思っていた。 公開されて二日目の最終上映時間から、スカラ座でクリント・イースト…

根岸派の文人の流れ、岩本素白

散歩の途中、垣根から柿がたわわに実っている。うーん。美味しそうだ。 カキノキ科の落葉高木。また、その実。山地に自生するが、古くから栽培される。よく分枝し、葉は短楕円形で先がとがり、光沢がある。秋に紅葉する。初夏に白い雌花と雄花とが咲き、秋に…

アンリ・ルソー 創作の秘密

晴れて日差しが強い。川を渡っていると一羽のカモメが頭上を飛び越えて行きつつあった。下から眺めると、あっという間に飛び去って行った。速い。 夕方、川岸のセンダンの木のそばから南の空を仰げば、三日月が昇っていた。暮れ行く空の色の変化が素晴らしい…

ムクドリをめぐって雑感

夕方、ある屋根の上にある事情で上がっていた。電線が水平方向に眺められる。 ピチピチ・・・ピチピチピチピチと音が聞こえてきた。音のする方にある電柱と電線に黒い塊があった。鳥が群れて電線に群がっている。ムクドリが集まっているのだ。 これから、ね…

奇想天外の仙人たち〜曾我蕭白

昨夜のNHK教育テレビの「知るを楽しむ」で〈この人この世界―辻惟雄〉は、「ギョッとする江戸の絵画」の第四回であった。今回は「奇想天外の仙人たち〜曾我蕭白」というタイトル。 辻惟雄(つじのぶお)さんが、三重県松阪市の朝田寺へ曾我蕭白の『唐獅子図』…

映画『紙屋悦子の青春』

イチジク畑でイチジクが暗紫色に熟している。今が食べ頃である。 最終上映時間からなので、オハギとヨモギオハギで腹ごしらえをして、黒木和雄監督の映画『紙屋悦子の青春』をサロンシネマ1で観た。観客は15人ほどで、それほど混んではいなかった。 昭和…

ムクゲの花

日の出前、五時頃に外出する。夜空には天の川がまだ見られた。草むらに虫の鳴き声がしている。南西にオリオン座、その下にシリウスが明るく輝いていて、冬の大六角形(ダイヤモンド)と呼ばれる六つの星が眺められた。それも、だんだん薄れてじきに星が見え…

文芸時評の話

公園を通り過ぎる途中、老梅の木のそばのベンチで休む。だんだん暗くなって日が暮れた。ちょっと池の様子を見に行くと、通行止めになっていた。警備員が立っている。迂回して、池へ回ることにした。すると、暗闇の池のそばに巨大なステージが造られていて、…

こぐこぐ自転車

昨夜、NHK教育テレビの「福祉ネットワーク」で「自転車シニア 東北・出会いの旅」という番組を観た。東北縦断の自転車旅行を、七十三歳のエッセイスト伊藤礼さんや六十歳代以上の「自転車シニア」たちが、道中の宿の人や十五歳の自転車旅行者と出会う。そう…

幸田露伴の『幻談』

晴れた空で、汗ばむほどの天気だった。橋を渡っている時に、大きな鳥がつばさを広げて、滑らかに上空を飛んでいる。おお、アオサギだ。 川面(かわも)に竹の篊(ひび)が並んで立てられている。その竹の先にもアオサギがいた。一羽、二羽。数は少ないが、あ…

ギョッとする江戸の絵画〜白隠

夜、NHK教育テレビの「知るを楽しむ」で、〈この人この世界―辻惟雄〉から「ギョッとする江戸の絵画」の第三回、〈「自己流」の迫力〜白隠〉という番組を観た。 辻惟雄(つじのぶお)さんが、白隠の描いた達磨図や自画像を話しているのだが、その見方が面白い…

舞楽を観る

出前自然史博物館という、一日だけの自然史博物館を訪れる。哺乳類、鳥類、植物、鉱物、化石、昆虫の標本が展示されていた。数は少ないが、少ないだけに厳選されている。ツキノワグマ・キツネ・タヌキ・イタチ・テン・コウモリなどの哺乳類。クマタカ・ハヤ…

絵本を旅する

昨日、通りで犬を散歩させている人が立ち話をしていた。通り過ぎる時に、その犬が近寄って来た。白い地に黒いまだらに散った点のある犬である。手を犬へ近づけると鼻を寄せて来る。ポインターに似ているようなので、犬の種類を尋ねると、ダルメシアンだとい…

ベルンのレーニン

公園のバラ園に赤い花が咲いている。プレートを見ると、ドフトボルケ(Duftwolke)という名前のバラだ。大きな花である。 ジャンニ・ロダーリの『猫とともに去りぬ』(光文社古典新訳文庫)から、三篇を読む。ロダーリの年譜を見ると、『チポリーノの冒険』*…