2016-01-01から1年間の記事一覧

耳で聴くエッセイ

この春に、雑誌「Fishing Café」SPRING2016年、vol.53から「ダーウィンを超えて生物学者・今西錦司のイワナ学」と湯川豊の「約束の川」連載30回「花と渓流魚の物語」を手にとって注目したのだった。 そのうち、湯川豊さんの文で、「花と渓流魚の物語…

水上のその水の上を蝶去らず

晴れた青空に、街路樹のネムノキが咲いていた。淡い紅色の花が満開になって綺麗だ。 揚羽蝶が軽やかに、ひらひらと舞う姿も見られる。 最高気温30℃、最低気温22℃。湿度が低いので風が肌に爽やかだ。 マメ科の落葉高木。東北地方以南の山野に自生。葉は羽…

川島雄三監督の映画『銀座二十四帖』

今月(6月)の「月丘夢路特集」からの一本で、川島雄三監督の映画『銀座二十四帖』(1955年、日活、117分、白黒)を鑑賞。 原作・井上友一郎の小説「銀座二十四帖」、脚本・柳澤類寿、助監督・今村昌平。 出演、月丘夢路、三橋達也、河津清三郎、北…

映画『新雪』について

1942年公開の五所平之助監督の映画『新雪』は、当時の人にどのように見られていたのだろうか。 猪俣勝人著『日本映画名作全史 戦前篇』によると、「新雪」は大映東京作品、ベストテン第六位、原作・藤沢桓夫、脚本・館岡謙之助。 松竹から大映に移った五…

夏の蝶忘れたるほど風に耐え

先日、道端の花壇にモンシロチョウを見かけた。 花から花へと飛び回る蝶の白い翅(はね)には、黒い紋がある。 近寄って観察をする。人の気配に敏感に反応して飛び去る。 ふらふらと飛び、また花へと舞い降りて来る。 シロチョウ科のチョウ。最も普通にみら…

五所平之助監督の映画『新雪』

今月は、広島ゆかりの女優、月丘夢路さんの作品を振り返ります。月丘さんは、1922(大正11)年に広島市に生まれ、宝塚歌劇団のトップスターを経て映画界へ転じ、大映、松竹、日活と活躍の場を変えながら150本余りの作品に出演しました。今回の特集…

新刊案内から

筑摩書房のPR誌「ちくま」6月号によると、獅子文六の『自由学校』が、ちくま文庫で復刊されるようだ。 代表作、遂に復刊! しっかり者の妻とぐうたら亭主に起こる夫婦喧嘩をきっかけに、戦後の新しい価値観をコミカルかつ鋭い感性と痛烈な風刺で描いた代表…

『人生散歩論』のこと

街路樹のナツメに花が咲いていた。大きさは六ミリほどで黄緑色である。 新刊で池内紀著『亡き人へのレクイエム』を読み終える。 雑誌で以前読んだ追悼文も収録されていた。 西江雅之さんへの追悼文は、雑誌「ユリイカ」で読んだものだった。 巻末にブックリ…

ともどもに揚羽寸分同じきが

止っているアゲハチョウを地面に見つけ近寄ると翅(はね)をパタパタさせた。 できるだけ接近して、その行動を観察し、撮影する。 やがてアゲハチョウは翅(はね)をパタパタさせながら、ぐいと頭を上げると地面から離れ飛び去った。 アゲハチョウ科のチョウ…

大いなる五月雨傘の故里に

梅雨の走りの雨。最高気温21℃、最低気温18℃。 小雨降る公園の池に寄ると睡蓮が咲いていた。 蛙の鳴き声は聞こえない。 「大いなる五月雨傘の故里に」 「五月雨のくだつばかりに降るに戀ふ」 中村汀女の俳句で、昭和十七年(1942年)の句です。 五月…

吉村公三郎監督の映画『森の石松』

今月(5月)も「時代劇特集」がつづく。 吉村公三郎監督の映画『森の石松』(1949年、松竹・京都、97分、白黒)を鑑賞。 出演は、藤田進、轟夕起子、志村喬、朝霧鏡子、飯田蝶子、笠智衆、沢村貞子、三井弘次、河村黎吉、殿山泰司。 脚本=新藤兼人、…

パヴェウ・パブリコフスキ監督の映画『イーダ』

今月は、ポーランド映画祭が4月に引き続き開催される。 パヴェウ・パブリコフスキ監督の映画『イーダ』(2013年、80分、白黒)を観た。 1960年代初頭のポーランドを舞台に孤児として育てられた少女が自身の出生の秘密を知るために旅に出る。モノ…

松田定次監督の映画『赤穂浪士 天の巻・地の巻』

今月の「時代劇特集」からの一本。 松田定次監督の映画『赤穂浪士 天の巻・地の巻』(1956年、東映・京都、151分、カラー)である。 昭和三十一年公開作品で、脚本が新藤兼人。 市川右太衛門、片岡千恵蔵をはじめとするオールスター・キャストで、東…

睡蓮と「漂流怪人・きだみのる」

16日、雨が降った。 17日、晴れ上がり、最高気温24℃、最低気温10℃。空気が乾燥して爽やかだ。 雨上がりの公園の池には睡蓮が咲いていた。水面に青空が映されている。 嵐山光三郎の新刊で『漂流怪人・きだみのる』を読んだ。 小学館の月刊『本の窓』…

うたたねをわが許されて蜜柑咲く

快晴で気温が上がるが、吹く風は爽やかだ。道端にタンポポが咲いていた。 夕方、上弦の月が南の空高く眺められた。 月の左に明るい星が接近している。木星だ。 キク科タンポポ属の多年草の総称。野原や道端に生え、根際から羽状に深く裂けた葉を放射状に出す…

伊丹万作監督の映画『赤西蠣太』

4月に引き続き、時代劇を特集します。今月の上映作品は、東映創立5周年を記念した大作「赤穂浪士 天の巻・地の巻」、日本映画初のワイド・スクリーン作品として大型画面に先鞭をつけた「鳳城の花嫁」、時代劇の演出に才気を見せながらも28歳の若さで早世…

子とあそぶひねもす殖ゆる蓮浮葉

雨上がりの曇り空。最高気温19℃、最低気温14℃。 公園の池に、睡蓮(スイレン)が咲いていた。 浮いた葉っぱの間から花が顔をのぞかせている。 蛙の鳴き声は聞こえないので静かだ。 「子とあそぶひねもす殖ゆる蓮浮葉」 「子を守りて母うつつなき飛燕かな…

沸きし湯に切り先青き菖蒲かな

快晴。タンポポの花が綿毛になっている。 風が吹くと、綿毛のついた種は大空へ飛んでゆく。 五月五日の節句の日は菖蒲湯(しょうぶゆ)の日でした。 菖蒲湯の匂いは独特のものですね。 「わが影のはや添ふ菖蒲葺(ふ)きにけり」 「髪を結ふ白き腕や軒菖蒲」…

映画『エヴァは眠りたい』

4月に引き続き開催中のポーランド映画祭からの一本。 タデウシュ・フミェレフスキ監督の『エヴァは眠りたい』(1957年、99分、白黒、日本語字幕、デジタル・リマスター版)を観ました。 幻想とリアルを織り交ぜた、不条理でダークなユーモアとルネ・…

顔打つて新樹の風のくだけ散る

1日は、雑節の八十八夜である。 立春から数えて八十八日目。 先日、道端のクローバーに蜂が飛んでいた。 おやおや、花が一面に敷き詰められたように咲いている。 白い花から花へと、蜜蜂は飛び回るのだった。 人が近づいても刺すようなことはなかった。 「…

アンジェイ・ワイダ監督の映画『約束の土地』

「ポーランド映画祭」からの一本。 アンジェイ・ワイダ監督の映画『約束の土地』(1974年、169分、カラー、デジタル・リマスター版)を鑑賞する。 1974年にウッチ映画大学を卒業したワイダは、1970年代に文学作品を数多く映画化している。な…

映画『ヨアンナ』と『わたしたちの呪縛』

4月から5月にかけて、ポーランド映画祭を開催します。 4月は、アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた「ヨアンナ」と「わたしたちの呪縛」、4つのエピソードから成る前衛的作品「シンキング・ナプキン」といった、ポーランド映画の“今”を…

映画『一心太助 天下の一大事』

迫力ある殺陣、胸を打つ人情、大らかな笑い。活劇から喜劇まで日本映画を特徴づける幅広いジャンルとして人気を集めた時代劇。4月、5月は、そうした時代劇の秀作、話題作を振り返ります。今月の上映作品は、日本映画史上のベスト・ワンに輝いた「七人の侍…

「追悼・高田宏さん 酒品のいい人」を読む2

新潮社のPR誌『波』1月号に柴田光滋氏の「追悼・高田宏さん 酒品のいい人」が掲載されていた。 エッソ・スタンダード石油の「エナジー」誌の編集者であった高田宏さんに執筆の依頼に柴田さんは会いに行った。 一九七〇年代の半ばあたりの話で、その後、何冊…

今月の新刊から2

新刊で池内紀著『亡き人へのレクイエム』についての興味深いトピックスがあった。 参照:http://www.msz.co.jp/topics/07975/ 本書で会える「亡き人へのレクイエム」への初出の文に筆者の池内紀さんは加筆修正を加えたという。 一部引用すると、 「最初の追…

葉櫻や町を見下ろす白き犬

20日は二十四節気のひとつ穀雨である。 穀物をうるおす春の雨という意味のようだ。 この時期は青空が澄み空気が乾き過ごしやすい。 藤の花が満開になっていた。 八重桜も青空に映えている。 「吾子等喜戯南瓜の花は民の花」 「葉櫻や町を見下ろす白き犬」 …

店頭の鍬の柄素(しろ)し燕来ぬ

晴れる。最高気温23℃、最低気温14℃。 公園の河岸の枝垂れ柳が、春風にゆらゆらとゆれていた。 ツツジは満開で見頃だ。桜はもう葉桜になっている。 ツバメも見かけた。 「葉櫻や同じ祷りに隣り合う」 「店頭の鍬の柄素(しろ)し燕来ぬ」 「口髭の下の口…

『「思想の科学」私史』のこと

新刊の『「思想の科学」私史』(編集グループSURE)を読む。 鶴見俊輔インタビューがあり、聞き手が黒川創さん。 雑誌「思想の科学」は、編集部が戦後の出発から転々と発行所の場所を変えながら発行された。 鶴見さんが、当時の編集に関わった人たちの回想や…

カモメの羽の形と本の形

川の中の浅瀬に、一羽カモメがいた。 餌(えさ)の魚を、ついばんでいる。 ついばみを止めると鳴き声を上げた。 大きな鳴き声である。 しばらくすると、もう一羽、カモメが飛来したのだった。 二羽が、交互に空に向けて、大きな鳴き声を上げた。 その後、二…

『ひとり居の記』から

街路樹の生け垣のツツジが咲き出した。 道端の草地に、一面にクローバーの花が咲き競っている。 まだ蜜蜂は見かけない。 「行春や波止場草なる黄たんぽぽ」 「春惜しむ水にをさなき浮葉かな」 「梅の実のいま少しほどふとりゐき」 中村汀女の俳句で、昭和九…